2021年 数理的研究の開始!古典期後期のティカルの社会階層を解明

土器生産址を推定する上で焼成址遺構(窯など)のような直接的な証拠と、土器作りの道具などの間接的な証拠が重要です。そうした証拠を発見することは難しいものです。そのため作戦を変更し、古典期ティカルにおいて「土器工人集団はどのような階層に属していてどこに住んでいたのか」を明らかにすることを目標に設定しました。

ティカルの社会階層を研究する上で、マウンドを調査した際の単位体積当たりの遺物出土量をデータとして数理的な研究を行うことにしました。これまでのデータを基に社会階層モデルを構築し、「多層的冪分布構造論」を提示したことが成果です。

下に挙げたように2021年の調査段階で建造物属性による階層分類として6分類しています。今後はそれぞれのレベルから出土する遺物の種類と多寡に関してデータを集めていきたいと考えています。

2019~2020年 墓を発見!土器工人の家(?)の発掘調査と粘土のサンプリング調査

前回の調査で「器面調整具」などの土器生産に関わる遺物が見つかった地点から最寄りのマウンドに対して発掘調査を実施しました。本当に最寄りのマウンドは現在のホテルジャングルロッジの下にあるため発掘が不可能でした。そのため現在調査可能な中で最も近いマウンドを対象としました。結果、土器生産に関わる証拠は見つかりませんでしたが、プロジェクトでは初となる墓の検出に至りました。

またティカルを囲む季節的な湿地帯(バホ)の一つに対してピットを設定し、大量の粘土の堆積があることを確認しました。各層の粘土試料をサンプリングして顕微鏡観察をしたところ、夾雑物の少ない良質な粘土であることが分かりました。

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2017年「土器作りの道具」発見?

2010年にティカル国立公園では管理エリアにおける水道管の設置を目的として水道会社による工事が行われました。重機を用いて長大なトレンチを設置する過程で土器集中遺構が複数確認されました。そのため国立公園所属の考古学者が状況の記録と遺物の採取・保管を行いましたが、未分析のままでした。

2017年の資料調査では、土器集中遺構が土器生産に関わる遺構である可能性を考慮して、出土した様々な遺物の分析を行いました。結果として「土製の器面調整具」、「乾燥過程で変形した土器の失敗品」、「乾燥不良の土器の失敗品」などの土器生産と関係のある遺物の同定に至りました。

2016年プロジェクト発足

『古典期ティカルにおける土器生産体制の解明』を目的に発掘調査プロジェクトが発足しました。小規模の発掘調査や資料調査となりますが、継続的に実施して、大きな成果を挙げたいと思います。

本プロジェクトでは学術クラウドファンディング(Academist社)も実施していますので応援よろしくお願いします。

https://academist-cf.com/fanclubs/209/progresses?lang=ja

*古典期は200-1000 CEの「マヤ低地域に長期歴を有する石碑が建立された時期」。マヤ文明と言えばこの時期!といった最も有名な時期と言えます。